改行する
メトリックス
TextOut() 関数で文字を表示する場合、文字列内に \n を指定しても
残念ながら TextOut() 関数はこれをサポートしないので改行されることはありません
では、どうやって改行を表現するのでしょうか
フォントのサイズはフォントや解像度で異なるため、固定値で改行するのは危険です
その環境では文字が改行したように見えても、他の環境では不自然かもしれないのです
そこで、フォントの詳細情報を持つメトリックス構造体を得る
メトリックスの構造体は TEXTMETRICS 型 です
typedef struct tagTEXTMETRIC { // tm
LONG tmHeight;
LONG tmAscent;
LONG tmDescent;
LONG tmInternalLeading;
LONG tmExternalLeading;
LONG tmAveCharWidth;
LONG tmMaxCharWidth;
LONG tmWeight;
LONG tmOverhang;
LONG tmDigitizedAspectX;
LONG tmDigitizedAspectY;
BCHAR tmFirstChar;
BCHAR tmLastChar;
BCHAR tmDefaultChar;
BCHAR tmBreakChar;
BYTE tmItalic;
BYTE tmUnderlined;
BYTE tmStruckOut;
BYTE tmPitchAndFamily;
BYTE tmCharSet;
} TEXTMETRIC;
この構造体を理解することは、テキスト操作に非常に重要です
一文字一文字を解読して、表示するプログラムなどでは、文字のサイズを得る必要があります
この構造体のそれぞれの情報の値は、ピクセル単位で格納しています
//ただし、インチなどで表現させる方法もある
tmHeight は、キャラクタの高さが入ります
事実上の改行は、現在のポジションからこの値を加算したもので実現します
この値は、tmAscent + tmDescent に等しいです
tmAscent は、文字のベースラインよりも上の幅(アセント)
tmDescent は、文字のベースラインよりも下の幅です(ディセント)
tmInternalLeading は、テキストの行間のスペースの範囲です(レディング)
tmExternalLeading は、tmHeight には含まれないレディングの参照値です
この値は利用しても無視してもかまいませんが、基本的に無視します
tmAveCharWidth は、小文字の平均的な文字幅を表し
tmMaxCharWidth は、フォント内で最も幅の広い文字の幅を表します
Windows では、文字の幅はその文字ごとに違うのです
このようなフォントを プロポーショナルフォント と呼びます
これに対し、全てのフォントが同じ幅のフォントを固定ピッチフォントと呼びます
Windows 3.0 以前は固定ピッチフォントで TmAveCharWidth と tmMaxCharWidth の値は同じです
tmWeight はフォントの太さを表す 0 〜 999 までの数値です
実際には、通常の太さならば 400、太字ならば 700 が格納されます
tmOverhang は、太字や斜体時に付加される幅を表します
tmDigitizedAspectX と tmDigitizedAspectY には
フォントに適したアスペクト比の値をそれぞれ表しています
tmFirstChar は、フォントに含まれる先頭の文字の文字コード、
tmLastChar は、フォントに含まれる最後の文字の文字コード、
tmDefaultChar は、フォントに含まれないキャラクタの代用として使うキャラクタの値、
tmBreakChar には、単語の間を表す文字のキャラクタの値を指定します
tmItalic には、斜体フォントであれば 0 以外、そうでなければ 0
tmUnderlined は、下線付きフォントであれば 0 以外、そうでなければ 0
tmStruckOut は、打消し線付きフォントであれば 0 以外、そうでなければ 0 が格納されます
tmPitchAndFamily 下位4ビットで、フォントの属性をあらわします
このメンバは、以下の定数の組み合わせになります
定数 | 解説
|
---|
TMPF_FIXED_PITCH | フォントが可変ピッチフォントであることを表します これが指定されていない場合、固定ピッチを表します
|
TMPF_VECTOR | ベクトルフォントを表します
|
TMPF_TRUETYPE | TrueType フォントを表します
|
TMPF_DEVICE | デバイスフォントを表します
|
tmCharSet はフォントのキャラクタセットを表しています
キャラクタセットに付いては CreateFont() を参照してください
フォントについては後記します。「フォント」の章を参照してください
この場では、tmMaxCharWidth までのメンバを理解できればかまいません
この TEXTMETRIC 変数にフォントの情報を得るには GetTextMetrics() 関数を使用します
BOOL GetTextMetrics(HDC hdc , LPTEXTMETRIC lptm);
hdc は、デバイスコンテキストのハンドルを指定します
lptm は、TEXTMETRIC 型変数へのポインタです
LPTEXTMETRIC 型 は TEXTMETRIC のポインタ型です
成功すると0以外の値、失敗すると0を返します
この関数に TEXTMETRIC を渡してフォント情報を得ます
#include<windows.h>
LRESULT CALLBACK WndProc(HWND hwnd , UINT msg , WPARAM wp , LPARAM lp) {
HDC hdc;
TEXTMETRIC tm;
PAINTSTRUCT pt;
static LPTSTR lptStr = TEXT("Kitty on your lap");
switch(msg) {
case WM_DESTROY:
PostQuitMessage(0);
return 0;
case WM_PAINT:
hdc = BeginPaint(hwnd , &pt);
GetTextMetrics(hdc , &tm);
TextOut(hdc , 10 , 10 , lptStr , lstrlen(lptStr));
TextOut(hdc , 10 , 10 + tm.tmHeight , lptStr , lstrlen(lptStr));
EndPaint(hwnd , &pt);
return 0;
}
return DefWindowProc(hwnd , msg , wp , lp);
}
int WINAPI WinMain(HINSTANCE hInstance , HINSTANCE hPrevInstance ,
PSTR pCmdLine , int nCmdShow ) {
HWND hwnd;
WNDCLASS winc;
MSG msg;
winc.style = CS_HREDRAW | CS_VREDRAW;
winc.lpfnWndProc = WndProc;
winc.cbClsExtra = winc.cbWndExtra = 0;
winc.hInstance = hInstance;
winc.hIcon = LoadIcon(NULL , IDI_APPLICATION);
winc.hCursor = LoadCursor(NULL , IDC_ARROW);
winc.hbrBackground = (HBRUSH)GetStockObject(WHITE_BRUSH);
winc.lpszMenuName = NULL;
winc.lpszClassName = TEXT("KITTY");
if (!RegisterClass(&winc)) return 0;
hwnd = CreateWindow(
TEXT("KITTY") , TEXT("Kitty on your lap") ,
WS_OVERLAPPEDWINDOW | WS_VISIBLE ,
CW_USEDEFAULT , CW_USEDEFAULT ,
CW_USEDEFAULT , CW_USEDEFAULT ,
NULL , NULL ,
hInstance , NULL
);
if (hwnd == NULL) return 0;
while (GetMessage(&msg , NULL , 0 , 0)) DispatchMessage(&msg);
return msg.wParam;
}
適切に改行されていることが確認できます
フォントが実際に描画されたときの具体的な描画属性やサイズは
フォント情報だけでは決定できず、そのデバイスに依存する部分があるのです
だから、GetTextMetrics() 関数は HDC を要求しているのです
GetTextMetrics()
BOOL GetTextMetrics(HDC hdc , LPTEXTMETRIC lptm);
現在のフォントの情報を取得します
hdc - デバイスコンテキストへのハンドルを指定します
lptm - TEXTMETRIC 構造体へのポインタを指定します
戻り値 - 成功すると0以外、失敗すると0が返ります