抽象クラス

オーバーライドの強制

以前、メソッドのオーバーライドのお話はしました
しかし、現時点ではメソッドのオーバーライドをフル活用するには不十分です
より確実にオーバーライドを利用するクラスを生成するにはabstract修飾子を利用します

abstract class clsName {
member...
}

clsNameにはクラス名を、member...には、クラスのメンバを記述します
abstractは、クラスに対してインスタンスの作成を禁止します
abstractクラスは、抽象クラスとも呼ばれ、メンバの宣言のためだけに使います
すなわち拡張用のクラスといってもかまいません

インスタンスの生成が禁止されているので、抽象クラスで利用できるのは静的メンバだけです
通常は、他のクラスに継承して利用します
抽象クラスではメンバの宣言をし、拡張クラスで実装を定義します
そのため abstract のクラスは、宣言をするだけでないようはいっさい実装しない空のクラスであることがあります

abstract class super_class {
	void write() {
	}
}

class LOVE_HINA extends super_class{
	void write() {
		System.out.println("LOVE HINA");
	}
}

class CCS extends super_class {
	void write() {
		System.out.println("Card Captor Sakura");
	}
}

class test {
	public static void main(String args[]) {
		super_class obj = new CCS();
		obj.write();

		obj = new LOVE_HINA();
		obj.write();
	}
}

CCS、LOVE_HINAクラスは super_classを継承しています
これら二つのクラスは、write()メソッドをオーバーライドしています

main()メソッドで、super_class型の変数を作成し
その変数に、サブクラスのインスタンスの参照を代入します(super_classのインスタンスを作成しようとするとエラーになります)
どのwrite()メソッドを実行するかは、実行時に動的メソッドディスパッチメカニズムで判断されます
この機能は、Java言語のオブジェクト指向プログラムにとって重要です
結果は次のようになりました

Card Captor Sakura
LOVE HINA

抽象クラスの機能によって、よりメソッドのオーバーライドを利用しやすくなっています
このように、抽象クラスでは継承することを前提にメンバの宣言のみを担当するのです

abstract修飾子は、クラスではなくメソッドに直接指定することもできます
ただし、abstractメソッドを含むクラスは、必ずそのクラス自身もabstract（抽象クラス）である必要があります

abstract class super_class {
	abstract void write();
}

class LOVE_HINA extends super_class{
	void write() {
		System.out.println("LOVE HINA");
	}
}

class CCS extends super_class {
	void write() {
		System.out.println("Card Captor Sakura");
	}
}

class test {
	public static void main(String args[]) {
		super_class obj = new CCS();
		obj.write();

		obj = new LOVE_HINA();
		obj.write();
	}
}

先ほどのプログラムのように、本体を持たない完全なオーバーライド用メソッドの場合
このプログラムのように abstract を指定して、抽象化するべきです
abstractメソッドは本体を持つことは許されません。たとえ空っぽでもです
そのため、抽象クラスのwrite()メソッドは次のように特殊な書式になっているのがわかります

abstract void write();

括弧 { } がありませんね
抽象メソッドは本体を持つことができないので、このように記述します

オーバーライドの禁止

では、逆にあるクラスをこれ以上拡張したくない場合
確実に継承を防ぐ方法があります
このクラスが拡張できないクラスであることを表すにはfinal修飾子を指定します

final class clsName {
member...
}

clsNameにはクラス名を、memberにはメンバを定義します
final修飾子が先頭にあるクラスは、これ以上拡張できないことになります
明示的に拡張を防ぐことによって、クラスのセキュリティを高め、性能を安定させることができます
これ以上特殊化させたくないクラスなどに対して、プログラマはfinal修飾子で拡張を禁止します

final class super_class {
	String name;
}

class sub_class extends super_class {
	int age;
}

class test {
	public static void main(String args[]) {
		super_class obj = new sub_class();
	}
}

たとえば、このプログラムをコンパイルするとエラーが出ます
エラー内容はJDK1.3（日本語）で次のようになりました

test.java:5: final super_class からは継承できません。
class sub_class extends super_class {

final修飾子は、さらにメソッドに対して指定することも可能です
クラスレベルではなく、単体のメソッドレベルでオーバーライドを禁止させたい場合などに有効です
メソッドに対するfinal修飾子はオーバーライドできないメソッドであるということを表します

class super_class {
	final void write() {
		System.out.println("kitty on yoru lap");
	}
}

class sub_class extends super_class {
	void write() {
		System.out.println("Card Captor Sakura");
	}
}

class test {
	public static void main(String args[]) {
		super_class obj = new sub_class();
	}
}

このプログラムの場合もコンパイルすることができません
sub_classでwrite()メソッドをオーバーライドしようとしていますが
スーパークラスのwrite()メソッドはオーバーライドを拒否しています
次のようなコンパイルエラーが出ました

test.java:8: sub_class の write() は super_class の write() をオーバーライドできません。
オーバーライドされたメソッドは final です。
void write() {

最後に、余談のような内容ですがfinal修飾子を指定した変数を紹介します
finalを指定された変数は値を変更できない定数として扱われます
C/C++のconstと同様です

final type varName;

typeには型、varNameには変数名を指定します
final変数は初期化以降いっさいの値を受け付けません

class test {
	static final String str = "kitty on your lap";

	public static void main(String args[]) {
		System.out.println(str);
		str = "LOVE HINA";
	}
}

このプログラムをコンパイルした場合、やはりエラーになります
final変数 str は、宣言時に初期化されています
つまり、これ以上 str の値を変化させることはできません
しかし、main()メソッドでstrに文字列を代入しようとしています
JDK1.3では、次のようなエラーが返されました

test.java:6: final 変数 str に値を代入することはできません。
str = "LOVE HINA";

abstract

クラス、またはメソッドの宣言で使用します
abstractは抽象クラスを作成します
メソッドで使用された場合、そのメソッドは本体を持たない抽象メソッドであることを表します
abstractメソッドを持つクラスは、abstractでなければいけません

final

クラス、メソッド、変数の宣言時に使用できます

クラスで使用すると、そのクラスは拡張不能になります
メソッドで使用すると、そのメソッドはオーバーライドを拒否します
変数で使用すると、その変数は初期化以降、いっさいの値を代入できなくなります

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