この文を書いている現在は、残念ながら D 言語は完成されたものではなく、発展途上のプログラミング言語です。 しかし、すでに実行ファイルを出力することができるコンパイラを含むツールが提供され、32 ビット Windows や Linux 等の環境で利用することができます。
プログラミング言語 D は、言語思想や理念を重視した言語ではなく、実践開発に利用できる言語を目標として作られているため、実装の開発が急がれてます。 すばらしいことに、プログラミング言語 D は「Windows アプリケーションを作れるか?」「3次元グラフィックスを使ったゲームを作れるか?」「新しいシステムのアプリケーション開発用に D を採用することができるか?」という疑問に YES という回答を返すことができます。
単純に D 言語を紹介するならば、D 言語は C++ や Java、C# 言語などの良い部分を引き継ぎ、より簡単に、高速なソフトウェアを、生産性や移植性を確保しながら開発することができます。 それでいて、Java や C# とはことなり、仮想マシンや仮想システム上ではなく、ネイティブシステムのアプリケーションを開発することができることを前提に設計されているのです。 Java や .NET システムでは、新しいライブラリが開発されるのを待っていた技術者たちも、プログラミング言語 D を使えば、生産性の高い言語を使いながらシステムを直接制御することができるのです。
D 言語の生産性の高さは、ガベージコレクタの存在と洗練された言語仕様にあるでしょう。 D 言語は仮想マシン上での動作を前提とはしていませんが、Java や .NET のガベージコレクションの思想は受け継いでいます。 D 言語によって開発されたアプリケーションは、確保したメモリを自動的に解放してくれるため、安全で長期運用が可能なソフトウェアとなるでしょう。 整備されつつある、標準ランタイムライブラリなども期待できます。
どんなに優れた言語仕様を見せられても、実装がなければ話しになりません。 プログラミング言語を使ってアプリケーションを開発するには、コンパイラなどのツールが必要です。 現在は Degital Mars から Windows と Linux 用のコンパイラが提供されています。 ドキュメントにしたがってコンパイラをインストールし dmd コマンドでサンプルをコンパイルして動作を確認してください。
コンパイラやツールはすべてコマンドラインから利用するものなので、グラフィカルな総合開発環境は用意されていません。 コンパイラやリンカの役割を理解していない初心者の方や、パスの通しかたが分からない場合は、まだ D を学習するのは早いと考えたほうが良いでしょう。 D 言語を学習する場合、最低でも C 言語を理解していなけば難しいと考えられます。 C++、C#、Java のいずれかの言語とオブジェクト指向の理解があれば、スマートに D を受け入れられるでしょう。