is と as


実装の確認

インターフェイスやボクシング変換を学習し、それを実用に移すとある問題が見つかります
それは、アップキャストは常に保証されますが、ダウンキャストがまったく保証されないということです

オブジェクト指向プログラミングでは、実行時まで型がわからないケースが多く
参照型を目的の型にダウンキャストする場合、確実性を持ちません
例えば、次のプログラムを見てください
class A {}
class B {}

class Test {
	static void Main() {
		System.Object objA = new A();
		B objB = (B)objA;
	}
}
これは、A クラスを Object 型に変換した objA という参照型があります
これを B クラスに変換しようとしていますが、Object 参照が B 型の実装を持つかどうかは
コンパイル時点では判断できません(このように、単純な場合は見ればわかりますが…)

そのため、コンパイルすることはできますが、実行すると処理が停止します
A クラスは B クラスと互換性がないため、A クラスの実装を持つ参照型 objA は
B クラスにキャストすることはユーザー定義変換を除いてありえません
この場合「例外」と呼ばれる割り込みが発生し、次のような文字を残して強制終了されます
未処理の例外 : System.InvalidCastException: 種類 System.InvalidCastException の
例外がスローされました。
   at Test.Main()
例外の捕捉(処理方法)については、後ほど詳しく説明しますが
このように、保証されない変換というのは頻繁に行われるケースもあり
その度に、例外を発生させ処理を停止させるようでは、正常なプログラムとは言えません

そこで、キャストする前に実装を確認する方法が存在します
もちろん、実行時に動的に参照型の実装を確認できます
実装の問い合わせには is 演算子を用います

expression is type

expression には参照型の式、type には型を指定します
expression が type である場合は true そうでなければ false を返します

これをキャストする前に行い、実装を確認すれば
実装を持つ場合と、持たない場合で異なる処理を施すことができます
class A {}
class B {}

class Test {
	static void Main() {
		System.Object obj = new A();
		Check(obj);
		obj = new B();
		Check(obj);
	}
	static void Check(System.Object obj) {
		if (obj is B) System.Console.WriteLine("This is B");
		else System.Console.WriteLine("This is not B");
	}
}
このプログラムの Test.Check() メソッドは
渡された参照型が B クラスの実装を持つかどうかを確認するメソッドです
渡された参照型を is 演算子で確認してその結果を文字列で出力します

もちろん、インターフェイスの実装を持つかどうかも調べることができます
おそらく、動的に参照型を変換する最も多いケースの一つが
何らかのクラスの参照をインターフェイス型にキャストするプログラムでしょう
このようなケースに is 演算子は大きく貢献してくれます
interface KittyStandard {
	string Name { get; }
}

enum KittyName { RENA , YUKI , MIMI }

class Kitty : KittyStandard {
	private string name;
	public Kitty(KittyName name) {
		this.name = name.ToString();
	}
	string KittyStandard.Name { get { return name; } }
}

class Test {
	static void Main() {
		System.Object kitty = new Kitty(KittyName.MIMI);
		CheckKittyStandard(kitty);

		kitty = new Test();
		CheckKittyStandard(kitty);
	}
	static void CheckKittyStandard(System.Object obj) {
		if (obj is KittyStandard)
			System.Console.WriteLine(((KittyStandard)obj).Name);
		else	System.Console.WriteLine("This is not KittyStandard");
	}
}
Test.CheckKittyStandard() メソッドは渡された参照型を is 演算子で調べます
参照型が KittyStandard インターフェイスを実装している場合と
そうでない場合に応じて、コンソールに結果を示す文字列を出力します

このように、is は参照型を目的の型に変換できるかどうかを動的に調べられます
ただし、is 演算子が調べるのは参照変換、ボクシング変換、アンボクシング変換のみです
is 演算子はユーザー定義変換など、その他の変換は考慮しません


安全な変換

is 演算子は実装を調べ、その結果をブールで返すというものでしたが
もともと、調べる目的がキャストならば as 演算子を用いるべきです

as 演算子は明示的なキャストを安全に変換する機能を提供します
この演算子を用いてキャストした場合、例外は発生しません
もし、目的の型の実装を持たない場合は null を返すのです

expression as type

expression には変換する参照型を、type には変換する型を指定します
この結果、変換できる場合はその型を、できない場合は null を返します
class A {}
class B {}
class C : B {}

class Test {
	static void Main() {
		System.Object objA = new A();
		System.Object objC = new C();

		B objB = objA as B;
		Check(objB);

		objB = objC as B;
		Check(objB);
	}
	static void Check(System.Object obj) {
		if (obj == null) System.Console.WriteLine("this can't cast B type");
		else System.Console.WriteLine("Success");
	}
}
B objB = objA as B は、objA を B に as 演算子を用いて明示的に変換しようとしています
しかし objA は B を実装しないので、この結果は null となるでしょう
通常のキャスト変換では、例外となりますが、as を用いた場合は発生しないのです

ただし、null を参照した場合は例外を発生されるので
変換した参照にアクセスするならば、やはり if で調べる必要があります

is と as 演算子で重要な違いは MSIL でも見られます
キャストが目的の場合 is 演算子はブールを調べた後にキャストすることになりますが
この時、実装を調べる時に isinst コードを用いて実装を確認し
さらに、キャストする場合は castclass コードでキャストするという2重のキャストになります
しかし as 演算子ならば isinst コードを用いて1度キャストするだけなので
is に比べてキャストだけが目的の場合は as の方が効率的と考えられます

また、as 演算子は参照変換とボクシング変換しか行いません
ユーザー定義変換など、その他の変換には通常のキャストを用いるしかありません


is

expression is type

参照型の実装を動的に問い合わせ、その結果をブーリアンで返します
expression が type 型の実装を持つならば true、そうでなければ false を返します

expression - 調べる参照型の式を指定します
type - 型を指定します

as

expression as type

参照変換、またはボクシング変換を明示的に行います
expression が type 型の実装を持たなければ null が返ります

expression - 変換する式を指定します
type - 型を指定します



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